日々の診療で患者さんとお話をしていると、この10年で歯科治療に対する患者さんの意識が、大きく変化してきたと強く実感することが多々あります。

同じ歯科治療を行う際も、患者さんの治療に対する意識が変わることで、私たち歯科医師が「求められる」診療には大きな違いが生まれます。今回は、歯科医師の目線から今「美容整形」と「美容歯科」の世界にどんな変化が起きているのかをご紹介したいと思います。

美容整形への考え方がこの10年で急速に変化

美容整形を考える女性
美容整形というと、昔は「人に知られず」「こっそりと」お金持ちや芸能人だけが行うものというイメージが強いものでした。もちろん、その意識が今は全くなくなったというわけではありません。ただ、明らかに美容整形に対しての意識は変わりつつあります。

「プチ整形」という言葉が出始めたのがちょうど10年ほど前でしょうか。この言葉の出現を機に、美容整形がグッと身近なものになりました。

芸能人でなくても、お金持ちでなくても、美容整形をお手軽な価格で気軽に試せる。そんな新しい感覚が若い女性を中心に生まれていったのです。大学生や20代・30代の若い女性が、プチプラでジュエリーを買う感覚と同じように、プチ整形をしてみることが、ひとつのブームにもなりました。

そんな「プチ整形」の出現を境に、徐々に40代・50代そして60代・70代の女性、さらには男性までもが、美容整形に対する抵抗意識がグッと軽減したように思います。

今では、お友達同士で「二重の整形をした」「涙袋を膨らますプチ整形をした」と隠さずお話していることも珍しくありません。この10年で、美容整形は「限られた富裕層がこっそりするもの」ではなく「誰でも気軽に綺麗になるもの」へと変化していったのです。

患者さんの歯科治療に対する考え方も大きく変化

美容整形が身近なものに変化したことで、歯科治療に対する患者さんの考え方にも徐々に変化がみられるようになりました。

「虫歯を治す」ために治療に来た患者さんが、その治療に使う「被せ物・詰め物」を白くしたい、さらにはその歯に合わせて、ほかの歯も白くしたいとご希望されることが増えていったのです。

また、歯科治療においては、自然な白さを求められることが多かったのが、「目立つくらい真っ白に」したいというご希望が急激に増えました。患者さんから、一般歯科治療にプラスして審美的なご希望をいただいたり、芸能人のような真っ白い歯にしたいというご依頼が増えた背景には、やはり美容整形に対しての意識変化が大きく関係しているように思います。

歯科領域にはなかった美容整形的な要望も増加していく

歯科と美容整形の関係
正直に言うと、ここまでは私にとって「予想範囲内」の変化でした。長年、歯科医として患者さんのお話やご希望を聞いてきたので、芸能人のようなご希望が時代とともに増えることを予想するのは、難しくはありませんでした。

私がこの数年で驚いたのは、歯科の領域には今までなかった「短所をアピールポイントに変える」という美容整形にみる発想がみられるようになったことです。

美容整形では、「日本人らしい低めの鼻」を「外人のように高い鼻」にすることがあります。しかし、歯科治療では本来このような考え方はありません。

「出っ歯」を「理想的な位置に矯正する」というように、「治す」意識が強いのです。逆に目立たせるという考え方は、オーソドックスな歯科治療にはありません。

美容整形の普及によって、この考え方を覆す要望が出てきました。例えば、矯正治療をするときにあえて八重歯は矯正せずに残しておく。八重歯以外の歯を矯正することで、八重歯だけを逆に目立たせるのです。

このような考え方が歯科治療にも普及したことは、美容整形と歯科治療のひとつの境界がなくなったと言っても、過言ではありません。コンプレックスだった「低い鼻」を「外人のような鼻」にするのと同じ、発想の転換がそこにはあります。

コンプレックスを自分のチャームポイントに変えるために、あえて「八重歯」は残す。そういった考え方が歯科領域にも生まれたのです。

今後の美容整形と歯科治療においておもうこと

美容整形と歯科の今後
美容整形が普及したことで、歯科領域においても新しい考え方が生まれました。「コンプレックスをアピールポイントに変える」という発想転換が治療の考えに加わることで、今後もさまざまな歯科治療に対する要望が生まれていくことでしょう。

もちろん、美容整形は依存症になる恐れや、やり過ぎてしまうと「美しさ」とは別の領域となってしまうことがあります。この記事は美容整形を支持するというものではありません。

ただ、歯科治療の領域に新しい風を吹かせていることは事実。これからの歯科治療において、今後の美容整形の動向には注目するものがあります。

口元のコンプレックスを、どのように解消してあげれば患者さんの理想に近づけるのか。その観点からも、美容整形の今後には歯科医師の目線からしっかりと着目していきたいと思います。